AustLit
なぜ「幻想」芸術を選んだのでしょうか。それは、オーストラリアと日本がファンタジー領域の映像や文学を豊富に創出しているからです。日本は、想像力豊かなマンガやアニメが特に有名であり、最近はヤングアダルト小説でも有名になりつつあります。オーストラリアでは、ヤングアダルト小説やファンタジー小説だけではなく、SF、推理小説、イラストレーション、コスプレなども盛り上がりを見せています。これらのジャンルや媒体は、様々な年齢層や生活環境の人たちに受け入れられやすく、熱狂的なサポーターやファンに支えられており、人々が国境を越えて繋がる機会を提供しています。
よって、オーストラリアと日本のファンタジー作家、アーティスト、サポーター、研究者を結び合わせるため、この交流祭を開催しました。ワークショップでは、オーストラリア人アーティストであるエメラルド・キング氏、ミーガン・ローズ氏、スーザン・ブイ氏、シェール・デ・コー氏に個人的な体験を語っていただき、日本のビジュアル・アーティストで童話を素材にした絵画を手掛ける鴻池朋子氏がそのストーリーから得たインスピレーションを基にスケッチし、オーストラリア人アーティストたちにそのデザインをクッションカバーに縫い付けていただきました。文芸翻訳家の井上里氏は、日本人学生がオーストラリア人作家イゾベル・カーモディー氏 (Isobelle Carmody) の作品の一部を本人と一緒に日本語に翻訳するワークショップを主催されました。また、作家やアーティストのインタビュー、ロジャー・パルバース氏による日本の代表的な作家である宮沢賢治の作品についてのマスタークラスも実施しました。このような出会いやコラボレーションは、魔法のように、予想外の効果を次々ともたらしました。例えば、2023年6月に神奈川大学で開催されたオーストラリア学会の全国研究大会では、Australian Success Story Little Known: Children/YA/Fantasy Literature「オーストラリア児童文学と日本」というテーマで、この分野の翻訳家や研究者の見識を交えた素晴らしいセッションが行われました(加藤他の動画リンクを参照)。このAustLitプロジェクトも交流祭が生んだ効果の1つであり、「幻想」的な日豪交流の歴史と背景の一端を担うオーストラリア・ファンタジー文学の日本語翻訳に着目します。

